石原悦子。日本国首相。その風貌から「ドジョウ型宇宙人」、性格から「イラ菅」など、様々な名前で呼ばれている。
石原悦子首相は、鶯谷プリンスホテルでいつものように朝食を食していた。
「松下さん、ちょっと料理長呼んで来てちょうだい。」
「はい。」
松下菜々子。家政婦として雇われ、国際会議の中にまで同席して、首相の身の回りの世話をしている。
松下菜々子は、ホテル料理長の尻をムチで叩き、調理室から首相の前に連れ出した。
料理長を見るなり、石原悦子首相はツバやパンなどを飛ばしながら怒号を発した。
「ちょっと!この紅茶!全然ブランデーが入ってないじゃないの!」
「ちゃんと入れてますが・・・」
国会で鍛え上げられた気迫がこもった怒号の前に、料理長は震える声で辛うじて声を発した。
「朝は体を温めないとだめなの!もっとこう、胸がカーッときて、こうクーッ!て言っちゃうくらいの、熱燗みたいなのを入れてちょうだい!」
首相は、松下菜々子に目で合図した。
松下菜々子は、料理長の尻をムチで叩き、また調理室へ連行した。
イラ菅っぷりを一通り発揮した石原悦子首相は、ユッケをカリカリに焼いたパンにのせ、食べ始めた。
その時、入口付近にいるSPが騒ぎ出した。
「何の騒ぎ?松下さん。ちょっと見て来てちょうだい。」
「はい。」
松下菜々子は入口に向かった。
すると、見慣れないSPと、入口付近をガードするSPが揉めていた。
「内閣官房情報調査室の今泉成室長が首相とお会いになるのだ!通せ!」
「その組織、私は知らないし、警視庁からの連絡も受けてない。通すわけにはいかない!」
「緊急事態なんだ!」
しばらく口論していると、痺れを切らして、今泉成室長が入口に向かってきた。
「もうここでいい。」
SPに向かってそう言った今泉成室長は、柱の影からこちらの様子を見る首相に向かい、叫んだ。
「首相!CIAから北朝鮮が昼から特別放送をやるって情報が入りました!何か凄いことが起きそうですよ!これは見逃せないんで、ぜひ見にきて下さい!絶対ですよ!」
用事を済ませた今泉成室長は、黒塗りの車に戻った。
そして1人のSPに対し、コンビニにパンとコーヒーを、もう1人のSPに対し、自販機にタバコを買いに行くようにとの指示を出した。
近くのコンビニにはタバコは売っていない事を、内閣官房情報調査室の情報で知っていた今泉成室長でしか出来ない、適確な指示だった。
「ったく、首相のケータイも、首相官邸の電話も、俺からの着信拒否ってるから直に会いに行くしかないんだよなぁ。」
今泉成室長は、吸いかけで揉み消したシケモクにもう一度火を付け、吸い出した。
ひと吸いしたところで、ホテルマンがやってきた。
「すみません、ここ、車停めないでもらえますか?」
「あ、はい。あれ?運転手も一緒にコンビニ行っちゃったの?しょうがねぇなぁ。」
今泉成室長は、運転席に乗り込み、自分で運転して内閣官房の施設へと向かった。
朝食を食べ終えた石原悦子首相は、警視総監との面会に向かった。
木場敏郎警視総監は、毎日やってくる石原首相にウンザリしていた。言われることも分かっているのだ。
「ちょっと、いつになったらイケメンSPに替えてくれるの?加納姉妹に負けない、グッドルッキングガイを用意してって言ってるでしょ!」
「ちゃんと任務をこなせて、しかもイケメンなんて、そんなにいませんよ。」
「さっき見たわよ。内閣官房情報調査室のSP、結構イケメンじょないの。あの人頂戴。」
「それは無理です」
その頃、北朝鮮では、キム・ジョニーロ死去の特別放送が流れていた。
- 続く -