○カ政府を見た – 2話.官邸年越しそば

石原悦子首相は、コタツに入り、大晦日定番のMHK紅白合戦に見入っていた。今年は猪木がプロデュースしたこともあり、紅白入り乱れてのくんずほぐれつの熱い試合となっていた。

「松下さん、まだ出来ないの?」
「はい、今お持ちします。」
松下菜々子は、官邸の台所で雑煮・七草粥入り年越しそばを作っていた。
それは、年越しから三ヶ日までいっぺんに味わってしまおうという、首相とコタツにいる面々の煩悩を叶える、夢と炭水化物が溢れる料理だった。

官邸のコタツは、全大臣が入れるサイズの特注品だ。冬はコタツで閣議をやりたいという、石原悦子首相のたっての願いで、官邸機密費から捻出して作られた。

大晦日は守衛もSPも年末休暇をとっており、誰もいなくて寂しいので、このコタツに全大臣を招集していた。

「あっ!」
テレビの正面側に座っている、財務大臣安住淳一郎が叫んだ。
その声に反応し、コタツの中の全大臣がテレビの方を向いた。

「痛っ!」
安住大臣は口を大きく開いたせいで、唇の端が割れた。

視線の先では、石井がKOされていた。
それを見て、一部は舌打ちし、一部は不敵な笑みを浮かべた。

コタツの上で諭吉が飛び交った。
そして各大臣は、財布から次の試合用の諭吉が取り出し、コタツの上に置いた。
この諭吉のやり取りは、石原悦子内閣の間で「お年玉」と呼ばれ、年末恒例のイベントとなっていた。

石原政権は、就任3ヶ月にして支持率5%という状態になったが、首相の108を超える圧倒的な煩悩を前に、野党も国民もなす術がなく、実力者小沢永吉への枕工作の甲斐もあり、4年も続く長期政権となっていた。
なので、お年玉も今年で4回目だ。

「出来ました。」
松下菜々子は、全大臣分の雑煮・七草粥入り年越しそばをコタツの上に並べた。

コタツの上は、煩悩を叶える年越しそばと諭吉でいっぱいになった。
外からは除夜の鐘が鳴りだした。

「ちょっと食前酒を」
国土交通大臣前原誠一郎は、鐘の音を打ち消す勢いで、慣れた手付きでワンカップをパカッと開け、グビッグビッと飲み干した。
そして飲み干すや否や、物凄い勢いでゲフッと咆哮を上げた。

その咆哮に全大臣が本能を刺激され、我先にとワンカップをパカッ、パカッと開け、口の横から思いっきりこぼしながら、勢いよく飲みだした。

「痛っ!」
口の横からこぼれる日本酒が、割れた唇にしみたせいで安住大臣は叫んだ。

紅白合戦が終わり、MHKニュースが始まった。
ニュースでは、オリンポス損失隠しのニュースをやっていた。

「これだ・・・」
首相は、日本の1000兆円にも達しようとしている借金問題を一気に解決する策を思いついた。

つづく

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